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  • 公開:2026/05/13
  • 更新:2026/06/09

【歯科医師監修】歯科用局所麻酔薬の使い分けとは?

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歯科医師が診療を行う上で第一関門となる、「局所麻酔」。
JDCnavi事務局でも多くの質問を受けております。
特に、2025年頃からキシロカインをはじめとする局所麻酔薬の品薄が発生し、歯科医師は通常とは異なる局所麻酔薬を使う場面が増え、正しく使い分ける知識と技量が求められています。
そこで、この記事では、局所麻酔薬に関して皆さんからよく受ける質問を、
歯学生・臨床研修医・若手歯科医師に向けて、主な歯科用局所麻酔薬の違いと使い分けの考え方を、日本歯科麻酔学会専門医の解説をもとに整理します。

 1.歯科用局所麻酔薬にはどのような種類がある?

【Q1】歯科用局所麻酔薬にはどのような製品がありますか?

現在日本で使用されている主な歯科用局所麻酔カートリッジ製剤には、キシロカイン、オーラ注、シタネスト、スキャンドネストがあります。
歯科用局所麻酔薬は、局所麻酔薬本体に、必要に応じて血管収縮薬が加えられた製剤として販売されています。
製剤ごとの違いは、主に

① 麻酔薬の種類 
② 血管収縮薬の有無・種類 
③ カートリッジ容量
④ 添加剤に違い


にあります。

キシロカイン・オーラ注・シタネスト・スキャンドネストの比較表

最もポピュラーに使われている「キシロカイン」は、塩酸リドカインという麻酔薬に血管収縮薬のアドレナリンが混ぜてあります。
キシロカインと同じ成分で剤形が変わったものに「オーラ注」というものもあります。
一方、プロピトカイン塩酸塩という麻酔薬もあります。
この中にフェリプレシンという血管収縮薬を入れたものが「シタネストオクタプレシン(以下:シタネスト)」という製品です。
最後に、麻酔薬にメピバカイン塩酸塩が入っているのが、「スキャンドネスト」という製品です。
特徴的なのは、この麻酔薬には血管収縮薬が入っていないことです。
いわゆるピュアな局所麻酔薬ですね。

添加剤にも違いがあります。
シタネストにはパラオキシ安息香酸メチルなどの保存剤が含まれています。
一方、キシロカインやオーラ注にはアドレナリン安定化のためのピロ亜硫酸ナトリウムが含まれています。
スキャンドネストは、パラベン系保存剤や亜硫酸塩を含まない点が特徴です。

キシロカインとオーラ注

 【Q2】キシロカインとオーラ注の違い

①分量の違い
キシロカインは1.8mL規格が一般的に用いられます。
一方、オーラ注には1.0mL規格と1.8mL規格があり、本稿では少量投与に用いられることのある1.0mL規格を中心に説明します。
麻酔薬を打つ時に、カートリッジ1.8mLの半分ぐらいを使って、残りは捨てるということがよくあります。
勿体ないようですが、残った麻酔薬を次の患者さんに使うわけにもいかないですからね。
オーラ注は1.0mLカートリッジであるため、少量投与で足りる症例に適しているという利点があります。
とくに小児では、体重や処置内容に応じて必要最少量で麻酔を行うことが重要であり、1.0mL規格が選択肢となることがあります。

②アドレナリンの濃度の違い
もう一つ、キシロカインとオーラ注では血管収縮薬のアドレナリンの濃度が違います。
オーラ注の方がアドレナリンの濃度がやや濃いです。
オーラ注1.0mLはキシロカインと比べてアドレナリン濃度がやや高いため、少量投与でも局所の血管収縮効果を期待しやすい製剤です。
ただし、止血効果は投与量、注射部位、処置内容に左右されるため、「出血を確実に止める目的で選ぶ」とまでは言い切らず、症例ごとに判断します。

3.高血圧・不整脈・虚血性心疾患がある患者への局所麻酔薬の考え方

アドレナリン含有薬は、麻酔薬を局所にとどめ、麻酔効果の持続や出血の抑制に役立つため、日常診療で広く用いられています。
その一方で、循環器系への影響に配慮が必要な患者では、さらに薬液量を必要最少量にとどめる、あるいは他剤への変更を検討することがあります。
実際の使い分けでは、単に「血圧が高いから使えない」とは判断しません。

・ 高血圧や不整脈、虚血性心疾患などの既往
・ 現在のコントロール状態
・ 術前血圧や脈拍
・ 処置の侵襲や必要な麻酔時間


を総合してアドレナリン含有薬を選択することもあります。

 4.シタネストとキシロカイン

【Q4】シタネストとキシロカインの違い

シタネストの血管収縮薬はアドレナリンではありません。
シタネストには血管収縮薬としてフェリプレシンが含まれています。
フェリプレシンはアドレナリンとは作用機序が異なります。
アドレナリンに比べて循環器系への配慮が必要な症例に適しているイメージを持つかもしれませんが、循環器系への影響がないわけではありません。
特に虚血性心疾患など循環器疾患のある患者では、血管収縮による循環負荷を考慮し、投与量や適応を慎重に判断する必要があります。
シタネストも「無条件に安全な代替薬」と考えるのではなく、適応を見極めて使用する必要があります。

5.シタネスト使用時に注意したいメトヘモグロビン血症

シタネストに含まれるプロピトカイン塩酸塩、いわゆるプリロカイン系局所麻酔薬では、まれにメトヘモグロビン血症に注意が必要です。
通常使用量で大きな問題になることは多くありませんが、全身状態や投与量には注意して使用します。

6.シタネストの代わりに使用するケースが増えているスキャンドネストの特徴

スキャンドネストと他3製品との違いは、血管収縮薬と添加剤の有無です。

①スキャンドネストは麻酔薬のみで血管収縮薬が入っていません。
スキャンドネストは血管収縮薬を含まないため、アドレナリンによる心拍数増加や動悸が問題となりうる症例で検討されることがある製剤です。
ただし、局所麻酔薬である以上、全身状態の把握、必要最少量投与、血管内注入の回避は他剤と同様に重要です。
「既往症があるからアドレナリンを含有しない薬剤は使える」と単純化するのは危険です。
症例ごとに適応を判断する必要があります。

②スキャンドネストは、パラベン系保存剤や亜硫酸塩を含まない点も特徴です。
このため、これらの添加成分への過敏反応が疑われる症例で選択肢になることがあります。
ただし、局所麻酔時にみられる有害反応は、添加剤によるアレルギーが原因と断定することは困難です。
迷走神経反射や過換気、アドレナリン反応、中毒症状など他の原因も考えられるので病態の観察により鑑別診断する必要があります。
「アレルギー体質だから一律にスキャンドネスト」と考えるのは誤りです。
既往反応の内容を慎重に確認してください。

7.スキャンドネストとシタネストの違い

スキャンドネストとシタネストの違いは、作用持続時間・止血効果の違いです。

シタネストはフェリプレシンを含むため、血管収縮薬を含まないスキャンドネストと比較すると、作用持続時間や出血コントロールの面で有利となる場合があります。
ただし、シタネストの作用持続時間や止血効果は、アドレナリン含有リドカイン製剤と同じと考えるべきではありません。
一方、スキャンドネストは血管収縮薬を含まないため、作用時間は短く、短時間処置に向く製剤です。

一般的に、作用の発現や効き方は、注射部位、炎症の有無、麻酔手技、処置内容によっても左右されますので、
薬剤の種類ばかりに目を奪われないようにしましょう。

8.局所麻酔薬を安全に使うための基本手技

投与手技が薬剤選択と同じくらいに大切です。

歯科用局所麻酔薬では、どの製剤を選ぶかだけでなく、安全な投与手技が非常に重要です。
具体的には、

・処置前に全身状態や既往歴を確認する
・術前血圧や脈拍を把握する
・必要最少量にとどめる
・血管内注入を避ける
・できるだけゆっくり注射する


といった基本が偶発症予防につながります。
特に循環器疾患のある患者では、「どの薬を使うか」だけでなく「どう安全に使うか」が重要です。

歯科用局所麻酔薬に関するよくある質問

Q. 歯科用局所麻酔薬にはどのような種類がありますか?
A. 日本の歯科診療で使用される主な局所麻酔薬には、キシロカイン、オーラ注、シタネスト、スキャンドネストなどがあります。
それぞれ有効成分、血管収縮薬の有無、容量、添加剤などが異なります。

Q. キシロカインとオーラ注の違いは何ですか?
A. どちらもリドカイン系の歯科用局所麻酔薬ですが、容量やアドレナリン濃度に違いがあります。
オーラ注には1.0mL規格があり、小児など少量投与で足りる症例で選択肢になることがあります。

Q. 高血圧の患者にキシロカインは使えませんか?
A. 一律に使えないわけではありません。
高血圧のコントロール状態、術前血圧、脈拍、循環器疾患の有無、処置内容、投与量を踏まえて判断します。

Q. シタネストとスキャンドネストは何が違いますか?
A. シタネストはフェリプレシンという血管収縮薬を含みます。
一方、スキャンドネストは血管収縮薬を含みません。そのため、作用持続時間や止血効果、適した処置内容に違いが
あります。

Q. スキャンドネストは安全な局所麻酔薬ですか?
A. スキャンドネストは血管収縮薬を含まない点が特徴ですが、すべての患者に無条件で安全という意味ではありません。
局所麻酔薬である以上、全身状態の確認、必要最少量投与、血管内注入の回避が重要です。

Q. 局所麻酔薬を安全に使うために重要なことは何ですか?
A. 薬剤選択だけでなく、既往歴の確認、術前血圧・脈拍の把握、必要最少量の投与、血管内注入の回避、ゆっくり注射することが重要です。

まとめ

今回は、主な歯科用局所麻酔薬の種類とそれぞれの違いを説明しました。
日常的に使う薬剤の理解を深めるとともに、普段は使わない薬剤を選択する際の利点・欠点を理解し、安全な手技で局所麻酔を行いましょう。

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