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  • 診療テクニック

2022/03/29

【歯科医師監修】浸潤麻酔が効かなくて困ったことはありませんか!?

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歯科医師の第一関門、『浸潤麻酔』



生活歯や歯周組織への処置、口腔外科手術に欠かせない「浸潤麻酔」。

この「浸潤麻酔」が効かないと、その先の治療に進むことが出来ません。

麻酔が上手く効かなくて苦労しているという方は、ぜひこの記事を読んでください。
その悩みが解決すること間違いなしです!



 

「何故、麻酔を効かせる必要があるのでしょうか?」



今まで、麻酔が不十分な中治療をしようとして、痛みで治療を中断せざるを得なくなった、患者さんが我慢してくれて何とか治療を終えられた、という経験はありませんか?
また、診療後に患者さんからクレームを言われたり、「担当医を交代してほしい」と求められたことはありませんか?



このようなケースを防ぐためにも、十分に麻酔を効かせる必要があるのです。



 

臨床経験30年以上の歯科医師がアドバイス

麻酔をするに当たっては、技能・薬品・針を的確に把握出来ていれば、麻酔処置でのトラブルは回避出来ます。

今回は、臨床経験30年以上の3名の先生に麻酔薬や注射針の使い分けから技能のポイントまで教えていただきました!

・静岡県静岡市開業 望月亮先生(日本歯科麻酔学会専門医)
・静岡県立短期大学教授 仲井雪絵先生(日本小児歯科学会指導医)
・神奈川県海老名市ベル歯科医院院長 鈴木彰先生



 

「痛みのある治療はだめなのでしょうか?」



《鈴木先生》

わたしの著書『生涯歯を残せる時代の5つのスキル』から、浸潤麻酔の項目をご紹介します。

「患者さんは痛みに敏感です。
初対面の歯科医師から治療を受ける時は、処置が痛くないか全身をセンサーにして探っています。
不快感を与えず必要十分な浸麻を行うことが出来なければ、患者の信頼を得ることが出来ず、不信感が生じてしまいます。

私自身の経験もそうですが、研修医たちも浸潤麻酔が上手くなると自信も付き、患者への説明や声掛けも堂々とし、その他の技術もメキメキと上達し始めます。」

やはり、浸潤麻酔のマスターが力を付ける一歩目と言えますね。

《望月先生》
「全身をセンサーにして」という記述、その通りだと思います。
痛くしないというのは歯科医にとって最大の武器で、口先だけの優しい言葉などとは比べ物になりません



では、麻酔を効かせるにはどうしたら良いのでしょうか?

答えは、薬品・針の使い分けを理解し、技能のポイントを押さえて実践する、ということです。

順番に見ていきましょう。



 

麻酔薬の使い分け



3名の先生はどのような麻酔薬を使っているのでしょうか?

《鈴木先生》
メインにキシロカイン、
補助的にシタネストを使っています。

《望月先生》
わたしは、
・キシロカイン
・シタネスト
・オーラ注
・スキャンドネスト
という4種類を使い分けています。

■局部麻酔について
局麻はやはり効きにくいのではという予測が大切だと思います。
止血目的のために打つのか、それとも除痛のために打つのかによって、薬剤や打ち方を使い分けます
循環器疾患を持つ患者でも、シタネストでは止血効果が期待出来ません。
その場合は、注意深くオーラ注を使います。
オーラ注は、酒石酸水素アドレナリンが1/73000含まれており、いわば「血管収縮薬が一番濃い」麻酔薬ということが言えます。

うちのアシスタントたちは、
・普段はオーラ注
・高血圧の患者はシタネスト
・何か事情のある特別な患者はスキャンドネスト
と思っています。

わたしがキシロカイン持って来いと言うときは、"強力な除痛が必要な難しい処置なんだな"と彼女たちに緊張が走ります。

実際にはキシロカインとシタネストで十分なんでしょうけどね。

《仲井教授》
麻酔薬は、私も(大学病院では)、
・キシロカイン
・オーラ注
・シタネスト
・スキャンドネスト
を使用していましたが、ほぼオーラ注とスキャンドネストで十分でした。

スキャンドネストは、血管収縮薬が含まれていないため麻酔効果が早く消失します。
そのため短時間で終わる治療に向いています。

小児患者では、術後の咬傷を嫌がる保護者もいらっしゃいます。
その場合、治療中はお利口さんに出来ても、あえてスキャンドネストを使用したり、交換期の乳歯抜歯でも(通常はオーラ注の注入量を少なめで十分対応出来ますが)、たまにスキャンドネストで対応していました。

学生・研修医・専門医を目指す若い歯科医師には、リドカインの中毒量(4mg/体重kg)を意識させて、(治療する前回に)患児の体重を計測させた後、薬液の濃度とカートリッジ1本あたりの量(1.0ml or 1.8ml)によって、治療で使用するオーラ注(あるいはキシロカイン)を最大限何本まで使用出来るかを事前に算出させてから、治療をさせておりました。

万が一、局所麻酔の奏功が悪い時、追加で局所麻酔を注入するとしたら、どこまでが限界量かを意識させる必要があると思っておりました。

上記の話を表にまとめました。




 

注射針の選択



注射針は何を使っているのでしょうか?

《鈴木先生》
30G(ゲージ)・ショートというものを使っています。

《望月先生》
注射針ですが、33Gという極細を使っています。



 

「注射針を曲げてから使った方が良いですか?」



《鈴木先生》
私が自院で研修医たちに教える際、針を曲げてから使うよう指示をしています。
直線状の針は、そのまま使用すると手の固定点が取りにくいため危険だからです。
あらかじめ、刺入と固定がしやすい角度に曲げておきましょう。
ただし、針の先端は滅菌状態を保つことと、針刺し事故防止のため、針の根本が中央部までしか触れないように十分注意してください。
針を曲げる手順はこちら

《望月先生》
これは熟練した術者なら効果的だと思うけど、初心者の術者には針刺し事故の危険を増すだけです。
確かにストレートアングルは危険だし打ちにくいので、わたしも仕方なく針を直角に近く曲げて打つことが多いです。
あれってイヤなんだよね。

《仲井教授》
私は小児or 障がい児・者を対象とする場合が多かったので、患児の視野に注射器を入れたくない理由により、やはり針を折り曲げて刺入しておりました。
注入時に針をレストである左の指に乗せやすいので、患児が不意に動いても動じることなく出来るからです。
(口腔外科では折り曲げ厳禁だと、学生時代に教わりました)



 

「小児の場合、刺入点の位置は?」



《仲井教授》
刺入点はほとんど(痛点の少ない)歯間乳頭部ですが、下顎乳前歯を抜歯する場合だけは歯肉頬移行部にしていました。
下顎6番の局所麻酔がどうしても効かない場合は、神経支配の破格を疑って、下顎6番の近心舌側に刺入することもあります。
痛みを与えやすい上顎口蓋側への刺入方法を、両手利きではない私は右側臼歯部と左側臼歯部で変えておりました。



 

麻酔科医のワンポイントアドバイス



◎局所麻酔で最も重要な「待ち時間」


《望月先生》
局麻の奏効に最も重要なのは、実は刺入してからどのくらいの時間を置けるかということに尽きます。
前述の下顎大臼歯抜髄の時なんか、時間を置きたいのでわざと麻酔後パノラマ撮りに行ったりします。
シタネストのメーカーは最低5分は置いてくれ、と言ってます。
そこまではとても時間を取れませんけど。

浸潤麻酔、局所麻酔は、手順の遵守のほかに、薬剤の選択、待ち時間も重要な要素です。



 

上達への道=ポイントを押さえて実践あるのみ!



浸潤麻酔が上手く出来ず苦労していたという方、いかがでしたでしょうか?

上記で述べた薬品・針の使い分け、技能のポイントを押さえて、実践してみてくださいね。

また、もっと詳しく知りたい!という方は、今回話を伺った鈴木彰先生著の『生涯歯を残せる時代の5つのスキル』をご覧いただくと、追加情報が載っています。
ぜひ、参考にしてみてください。


『生涯歯を残せる時代の5つのスキル』




皆さんの臨床に少しでも役立てていただければ幸いです。


 

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