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  • 診療テクニック
  • 公開:2021/11/12
  • 更新:2021/11/12

『旧補綴物除去』がその後の処置の質を左右する!

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補綴物の材料と除去方法を見極めよう!



う蝕治療、根管治療、補綴物再作製のための前処置である旧補綴物・仮封材の除去。

しっかり取り除かないと、その後の処置を台無しにしかねません。

旧補綴物除去の際、大切なのは以下の3点。

1.健全歯質にダメージを与えずに除去すること
2.短時間で安全・快適に除去すること
3.旧補綴物の切削は最小限で済ませること


また、単に除去するだけでなく、う蝕や亀裂などの歯の判定も同時に行いましょう。

使用機材として挙げられるのは、
・除去用カーバイドバー
・ダイヤモンドバー
・超音波スケーラー
・スプーンエキスカ
・クラウンオープナー
・インレークランリムーバーポイント
・ワムキークラウンリムーバー
・KAKOプライヤー
・外科用エイヒピンセット
・ラバーダムセット一式
などです。

補綴物の除去には、その材料を「切断する」、歯面から「削り取る」「剥離する」「弾き飛ばす」「浮き上がらせる」などの手段を使い分けます。

材料別による補綴物除去の方法



■セメント類
材質が軟らかく、機械的維持力が弱い材料なので、ダイヤモンドバーで削り取ります。
薄くなったら弾き飛ばすことができます。


■コンポジットレジン(CR)
歯面に接着していますが、削りやすい材料です。
接着面を完全に削り取りましょう。
歯質と同色のため、削るときは硬さと切断感触で歯質と区別します。
エアーで乾燥させて、歯質との色調を区別することもできます。
感触は、フィラーの含有率により歯質に比べて、硬・軟様々に感じられるので注意してください。


■石膏系仮封材(キャビトン)
とにかく軟らかく、かつ機械的維持力も弱い材料です。
超音波で削り、弾き飛ばすことができます。


■メタルインレー
エンドは内側性窩洞であり、維持力を落とすと一気に外すことができます。
切断線を入れて剥離する手順が適切です。


■全部金属冠(クラウン)
切断線を入れて、クラウンオープナーで剥離させるか、KAKOプライヤーで浮き上がらせます。
またはワムキークランリムーバーで浮き上がらせることで除去することができます。



材質ごとに器具を正しく使い分けることで、適切な素早い除去をすることができます。

逆に器具の使い分けを誤ると、患者のダメージが大きくなったり、器具の刃こぼれなどを引き起こすことも。



 

インレーなどの内側性補綴物の除去について【術前診査】



まずは「術前診査」で、材質や形態を見極めましょう。


術前診査1:除去する補綴物の種類を確認します
・金銀パラジウム合金
・金合金

・アマルガム
・ポーセレン
・コンポジットレジン
・硬質レジン
・仮封用セメント
・充填用セメント
・裏装用セメント
それぞれの材質に合わせて、使用するバーを使い分けます。


術前診査2:形態を診査します
直視とデンタルエックス線写真で診査します。
直視では維持形態、デンタルエックス線写真では深さが分かります。
(しかし、厚みは正確にはわかりません)


術前診査3:窩洞内と根管を診査します
窩洞内う蝕のほか、裏装材、スクリューピンの有無を診査します。

術前診査4:歯髄との距離を診査します
歯髄に近接するところがあるか、歯髄腔の教唆など形骸変化があるか診査します。


 

インレーなどの内側性補綴物の除去について【除去手順】




除去は、
・切断する
・浮き上がらせる
・剥離する
・弾き飛ばす
・セメントを除去する
・最終チェックをする

の手順で行います。


1.切断する
切断線は維持力を下げるために入れます。
金属の場合…カーバイトバー
ポーセレン、レジン、セメントの場合…ダイヤモンドバー
石膏系の場合…超音波スケーラー
を使用します。
切断線はできるだけ短くできる場所を選びましょう。


2.浮き上がらせる
切断線とスプーンエキスカのカーブを利用し、てこの原理で金属を浮き上がらせます。
簡単に浮き上がらないときは、切断線を追加します。


3.剥離する
頬舌面では、インレークラウンリムーバーのポイント「S型」を、隣接面では、「くさび型」を使用します。

4.弾き飛ばす
超音波振動を利用して、インレーを弾き飛ばします。
浸麻をしていない場合、チップを歯に直接当てないこと。
超音波振動は、患者に不快感を与えやすいので要注意です!


5.セメントを除去する
金属と歯質の間は、必ずセメントが介在します。
除去の方法は、削り取る、剥離する、弾き飛ばす、から選択します。


・最終チェックをする
除去した充填物が軟口蓋・口腔前庭に残っていないか、誤嚥していないか、金属は確実に回収できているか、窩洞内にセメントなどの材料が残っていないか、しっかりチェックしましょう。

確実に素早く除去するイメージが沸いてきましたでしょうか?



 

メタルクラウン(外側性補綴物)の除去について



外側性補綴物には、クラウン、前装冠、ポストなどの種類がありますが、今回は、難易度が低めなメタルクラウン・メタルコアの除去の手順と方法を紹介します。

除去は、
手順1:クラウンを除去する
手順2:スケーラー、エキスカで、セメント、二次う蝕を除去する
手順3:KAKOプライヤーでメタルコアを除去する

の順で行います。

手順1のクラウンの除去ですが、一般的なクラウンの除去法と切削量の少ないメタルクラウン除去法があるのをご存知ですか?



 

▼一般的なクラウンの除去法

メタルクラウンの維持力は、軸面の高さ、またはグルーブでもたせています。

軸面でもたせている場合は、頬側・舌側の中央部付近にグルーブのように切断線を入れて、頬側・舌側・咬合面の3面を近縁心方向に広げる方法で頬舌面の維持力を落とします。

維持力が落ちると、容易に浮き上がらせることができます。

▼切削量の少ないメタルクラウンの除去法

「ワムキークラウンリムーバー」という器具を使用します。

この器具では、切削量を少なくするだけでなく、時間短縮、作業の簡略化も図ることができます。

①アクセスホールを書き込みます。
近心頬側で咬頭から2~3㎜下の金属の厚みの下縁を狙います。

②アクセスホールを切削します。
カーバイトバーFG1558でワムキークラウンリムーバー♯1よりひと回り大きいアクセスホールを切削します(幅4㎜、高さ2㎜程度)。
深さは深い方が効果が高いので、咬合面の中央付近まで切削。
歯質とセメントの間のセメントラインを狙いましょう。

③ワムキーを試適します。
ワムキークラウンリムーバー♯1を試適します。
このとき抵抗なく入ることが重要です。
この時点では容易に回転しませんが、もし回転する場合は穴が大きいので、ワムキークラウンリムーバー♯2に変更してください。

④アクセスホールの位置を確認します。
この時点でアクセスホールはメタルと歯質の境界部を切削しているはずです。
もしそうでない場合は、アクセスホールの位置を変えるか、通常の頬側から舌側への縦切開の方法へ切り替えてください。

⑤クラウンを浮き上がらせます。
適切にアクセスホールができていると判断したら、ワムキークラウンリムーバーを90度ひねります。
そうするとクラウンは容易に浮き上がります。
クラウンをはずしたら、次にメタルコアの除去を行います。
ここでは「KAKOプライヤー」を使う方法を紹介します。
ワムキーと同様に、除去を容易にする器具です。

手順2にあるように、
スケーラー、エキスカでセメント、二次う蝕を除去します。
セメントの除去時は、超音波スケーラーの使用が効果的です。

そして手順3、KAKOプライヤーでメタルコアを除去します。
頬側、舌側の歯質とメタルの境界に深さ1~2㎜、幅10㎜程度の溝を作ります。
KAKOプライヤーを頬側、舌側の溝に入れます。
KAKOプライヤーのストッパーを調整し、メタルコアを浮き上がらせます。
(ちなみに、操作の自己流は危険です。説明書の通りに操作してください。)

裏素材、セメントを超音波スケーラーで除去します。



 

補綴物除去が難しいと悩む方へ



いかがでしょう?

イメージできましたでしょうか?

除去が難しいと悩む方からは、
「除去する材料が多種類」
「窩洞(削る範囲)が分からない」
「補綴物の維持力と接着力をなくす方法があいまい」
「材料による機材の使い分けが分からない」
との声を聞きます。

そんな時は、その補綴物が「接着」か「合着」かを見極めるのがポイントです。

1:合着系→維持力を落とす
2:接着系→接着面を破壊するまで削る


まずはこの2つを頭に叩き込んで、除去の手順をジャッジしてみてください。

さらに詳しく手順を知りたい方は、


「生涯歯を残せる時代の5つのスキル」
鈴木彰著 クインテッセンス出版株式会社


を手に取ってみてください。

写真で分かりやすく手順や使用器具を解説。

また、講義では教えてもらえない現場で役立つテクニックもたっぷり記載されています。




今回も最後までお読みいただきまして、
ありがとうございました。

写真なしでの説明なのでちょっと分かりにくいかもしれませんが、手順を頭の中で反芻して、現場ではスムーズに治療を進めてくださいね!


応援しています。



 

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