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  • 公開:2025/03/07
  • 更新:2025/03/07

グローバル化時代の歯科医療 〜外国人患者さんに寄り添う歯科医院の取り組み〜

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皆さんは外国の方から話しかけられたことはありますか?
街中で道を聞かれたら、どう対応していますか?
多くの方が戸惑ってしまうのではないでしょうか。片言でも日本語を話してくれれば何とかなるかもしれませんが、母国語だけで話しかけられたらと思うと不安になりませんか?
こちらも戸惑い困ってしまうと思いますが、きっと相手はもっと勇気をだして話しかけていると思います。

日本語が話せない外国の方々がむし歯になってしまったら、一体どうしているのでしょう
そんな日本の現状に疑問を持ち、動き始めた歯科医院があります。
2024年12月14日に開催された第39回日本健康科学学会学術大会で、神奈川県にある「ベル歯科医院」の歯科医師である青木先生が一般演説で発表した内容がとても参考になります。
青木先生は「外国人患者さんがもっと気軽に、早期に歯科治療を受けられる環境づくり」をテーマに、同医院の取り組みについて発表しました。グローバル化が進む現代の歯科医療において、外国人患者さんへの対応はますます重要になっています。
本記事では、ベル歯科医院の事例を通じて、言語や文化の壁を越えた歯科医療のヒントをお伝えします。

 外国人患者さんの“早期受診”を目指して

青木先生によると、外国人患者さんは症状が悪化してから来院するケースが多いと言います。その背景には、次のような課題がありました。

・言語の壁:診察予約や治療説明が十分に伝わらない不安
・文化の違い:日本の医療システムや受診方法への理解不足
・受診へのハードルの高さ:飛び込み来院が主流で、計画的な受診が難しい


そこで、2021年4月からベル歯科医院では外国人患者さんが気軽に来院できる環境づくりを本格的にスタートしました。具体的な施策は次の2つです。

1. 多言語対応の強化
診察や受付において、英語や中国語、やさしい日本語での対応を整備しました。
特に「やさしい日本語」を導入したことで、母語が異なる患者さんへのサポートがスムーズになったそうです。
2. スタッフ教育の充実
異文化理解を深めるための研修や、コミュニケーションスキル向上を目的とした教育プログラムを実施。青木先生は「文化の背景を知ることで、患者さんの気持ちにより寄り添えるようになった」と語りました。
言葉以上に、相手の文化に寄り添うことが大切でした。

データで見る取り組みの成果

青木先生は演説で、2020年から2024年までの新規外国人患者94名のデータを示しました。
以下の結果から、環境整備の効果が明らかになりました。

・新規外国人患者数の増加
   2020年の9人から2023年には27人に増加しました。
・出身国の多様化
   23か国から患者さんが来院し、特に20〜39歳の若い世代が半数を占めています。
・予約方法の変化
   Web予約の利用率が2020年の22.2%から2023年には39.5%にアップ。
   飛び込み来院は33.3%から10.5%に減少しました。

これらの結果は、外国人患者さんが計画的に歯科治療を受けられるようになり、症状が悪化する前に早期治療が可能になったことを示しています。

患者さんの声に見る成功のヒント

青木先生は演説で、外国人患者さんから寄せられた声も紹介しました。

・「日本語が苦手でも安心できた!」
・「痛みがひどくて来院したけど、丁寧に説明してもらえて安心した!」
・「治療もスムーズで、これからも通いたい!」
・「料金を先に伝えてくれて助かる!」

こうしたポジティブな反応は、多言語対応やスタッフの親切な対応が患者さんの不安を解消したことを物語っています。

不安から始まった取り組み

しかし、青木先生も最初から順調だったわけではありません。演説では「言葉の壁に対する不安」についても率直に語りました。

・「言葉が通じなかったらどうしよう?」
・「治療説明がきちんと伝わるのか?」


こうした不安の中、スタッフ全員で試行錯誤を重ね、次のような工夫を取り入れました。

・多言語の問診票(英語・中国語・やさしい日本語)の導入
・簡単な指さし会話集を活用してのコミュニケーション
・Web予約システムによる言語不要の予約方法の導入
・翻訳アプリを活用した治療説明


これらの取り組みにより、スタッフも「言葉の壁は工夫次第で越えられる」と自信を持てるようになったそうです。

母国語で記載の指差し確認シートの活用

青木先生は、スタッフによる「やさいし日本語」の採用のほかに、外国人患者さんの母国語で書かれた「指差し確認シート」を活用しました。
そのシートには、「痛い」「痛くない」
など、診察中の患者さんの訴えに欠かせないものが記載されています。
これなら、会話でのコミュニケーションに不安があっても、双方の意思疎通が図れますね。
患者さんの不安も取り除けますし、歯科医師の治療もスムーズに進みます。
これはとても柔軟で画期的な手法では」ないでしょうか。

他の歯科医院にも応用可能なポイント

青木先生は、「ベル歯科医院の取り組みは他の歯科医院でも応用可能」と強調しました。特に以下のポイントはどの医院でもすぐに実施できる方法です。

1. 多言語対応の強化
   英語だけでなく「やさしい日本語」の導入は、患者さんにとって安心感を与える大きな要素です。
2.スタッフ教育の充実
   異文化理解を深める研修は、患者さんだけでなくスタッフ自身の成長にもつながります。
3.Web予約の導入
   言語の壁を感じることなく予約できる環境は、外国人患者さんにとって非常に便利です。

終わりに

青木先生は演説の最後に「誰でも安心して通える歯科医院を目指すことが、これからの歯科医療にとって重要だ」と強調しました。グローバル化が進む中、外国人患者さんが「気軽に」「早く」歯科治療を受けられる環境作りは、地域医療の質を向上させる大きなステップです。
ベル歯科医院の事例は、言語や文化の壁を超えた歯科医療の可能性を示す成功例です。
あなたの日常の中でも、今日からできる小さな一歩を考えてみませんか? 小さな工夫が、地域の医療環境を大きく変えるかもしれません。

取材協力:神奈川県海老名市「ベル歯科医院」

以下に「ベル歯科医院」のYouTubeを紹介いたします。
ぜひご覧ください。

https://youtu.be/O4RucJdIHO0

https://www.youtube.com/watch?v=gRZxAIjmKm8&t=243s

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