人の口腔内はそれぞれ違うので、見慣れないと診療するのが難しいです。
どのようにしたら患者さんの口腔内を見慣れることができるでしょうか?
口腔内を見慣れるための方法
これが口腔内を見慣れる王道です。
そうは言っても、大学での実習や研修医の診療では数が限られています。
多くの患者さんを見ることは難しいかもしれません。
症例数が限られている場合、患者さんの口腔内を的確に見ることができるようになるにはどうしたら良いでしょうか?
口腔内診査のポイントとは?
1.3大リスク因子の観点から観察する
口腔内の3大リスク因子は、う蝕・歯周病・咬合状態です。
複雑に見える口腔内は、この3つの因子が絡み合っているケースが多いのです。
たとえば、歯周病が進行し、脱落した歯により一部欠損が見られる口腔内を見たことはありませんか?
・残存歯には動揺が見られ
・根面露出した歯には根面う蝕が発生。
・挺出・傾斜などの残存歯の位置異常により咬合平面が凸凹になっている、
といった症例を想定してみましょう。
このような複雑ケースでも、単純化できます。
歯牙(う蝕)、歯周組織(歯周病)、咬合状態(欠損、咬合平面、咬合関係)の3要素に分解します。
さらに、それぞれの進行度を低・中・高の3段階に評価します。
このケースでは、
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歯牙:根面う蝕など→進行度:中~高
歯周組織:歯周病重度→進行度:高
咬合状態:欠損(+)
咬合平面(不正)
咬合関係(咬合支持不足)
→進行度:高
総合進行度評価:高
ーーーーーーーーーーーーーー
と判断できるでしょう。
要素分解、進行度評価をすることにより、複雑な口腔内は整理され、理解しやすくなります。
まずは簡単な症例、つまり要素分解をする必要がないと思える症例から観察・進行度評価を行って下さい。
難症例は後回しにした方がラクに感じます。
2.病変の原因を把握する
難しさを感じるもう一つの理由は、口腔内病変の原因が見抜けないからです。
C2のう窩があり、その歯に症状が見られる症例があったとします。
病変と主訴が一致しているので、そう難しく感じることはないでしょう。
別の症例、う蝕病変が見られず、健全歯のように見られる歯牙で知覚過敏が生じている症例ではどうでしょうか。
主訴に結びつく病変を簡単に見つけることができません。
このケースでは、原因は歯根亀裂かもしれません。
(「生涯歯を残せる時代の5つのスキル」p.42に知覚過敏の原因リスト掲載)。
原因を推定してみましょう。
「第2章主訴対応」では高頻度な15の主訴に関して、原因を列挙していますので参考にして下さい(写真参照)。
次に、「原因→変化→現在の病変」という流れを見抜くトレーニングを行います。
「現在の病変→そこまでの変化→原因」と過去にさかのぼって原因に到達する方法もあります。
実は原因は限られています。
原因の数も多くはありません。
多様に見える口腔内病変は、原因まで突き詰めるとシンプルな姿に見えてきます。
3.症例記録をリスト化
皆さんは、自分の行った症例を記録していることでしょう。
一つ一つの症例記録はリストに整理しましょう。
リストに挙げる項目は以下の通りです。
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(患者番号:ある場合は)
患者名
処置年月日
部位
病名
処置内容
所要時間
難易度(A/B/C)
所見または特記事項
自己評価
(指導者評価)
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一症例を行うことに、リストには1行が追加されていきます。
口腔内診査の目標症例数は、まず10症例。
次に30症例。
更に100症例と設定します。
その当面目標数を意識して、症例毎に丁寧に診査を行って下さい。
目標症例数を通過する毎に実力アップを実感するはずです。
並行して集計を行います。
集計は、1週間、1か月、1年などの期間ごとに行います。
集計値から目標症例数にどれだけ近づいてたか把握しましょう。
目標に到達するには、あと何症例必要ですか?
必要数が分かれば、症例を意識的に見つける行動を行うようになります。
ある期間内にできるだけ多くの症例を経験する、密度を高めることで、トレーニング効果が高まります。
短期間のうちに口腔内を見慣れるレベルに近づくことができるでしょう。
1.3大リスク因子の観点から観察する
2.病変の原因を把握する
3.症例記録をリスト化
3つのポイントのうち、どれが一番簡単にできそうですか?
簡単だと思えることから着手しましょう。
(ベル歯科医院:鈴木 彰)2018.06
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