- 公開:2026/03/30
- 更新:2026/4/13
「患者さんの人生が変わる瞬間に立ち会える」─矯正歯科医35年のリアル【佐々木先生インタビュー】
佐々木 啓真 歯科医師
歯学部生の皆さん、将来の専門分野は決まっていますか?
「矯正歯科に興味はあるけど、実際どうなんだろう?」
「研修は厳しいって聞くけど、本当?」
「一般歯科との違いは?」
そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は、東京医科歯科大学卒業後、35年以上にわたり矯正歯科医として約4,000症例を手がけてきた佐々木先生に、矯正医としてのリアルな日々をお聞きしました。
自身も矯正治療を受けた経験を持つ先生が語る、矯正医という職業の本質とは──。
佐々木先生プロフィール
・卒業: 東京医科歯科大学 歯学部(1989年)
・専門医資格: 日本矯正歯科学会認定医(1997年取得)
・経歴: 東京医科歯科大学 歯科矯正学第一講座(1989-1999年)、現在は海老名市「ベル歯科医院」勤務
・累計症例数: 約4,000症例
H2: なぜ矯正医に?──劣等感から生まれた使命感
H3: 「人前で笑えなかった」自分自身の矯正体験
「人前で笑うとき、いつも手で口を覆っていました」
佐々木先生が矯正医を目指した原点は、小学校低学年から高校生まで続いた、ご自身の矯正治療体験でした。
「歯並びに劣等感を抱いていて、恥ずかしくて口の中を見せられなかったんです。でも、矯正治療で歯並びが改善されていくと、自分の心も変わっていくのを実感しました」
この経験が、「自分のように歯並びで悩む人の力になりたい」という想いへとつながります。
H3: 50年前の矯正歯科事情──2時間待ちは当たり前
「当時、神奈川県で矯正歯科を掲げて開業している医院は、わずか2件しかありませんでした」
佐々木先生が矯正治療を受けていた50年前、矯正歯科医院は極めて少なく、受診するには相当な覚悟が必要でした。
「病院の外まで行列ができていて、1~2時間待ちは当たり前。それだけ矯正治療を必要としている人が多かったんです」
H3: きっかけは身近な存在
6歳上のお姉さまが中学生の時に歯科医師と結婚されたことも、歯科という世界を「なんとなく意識する」きっかけになったといいます。
自分自身の経験と、身近な存在からの影響──この2つが、佐々木先生を矯正医への道に導きました。
H2: 矯正医への道のり──最初の2年間の厳しい現実
H3: 大学に寝泊まりする日々
「矯正科に入って最初の2年間は、大学に寝泊まりする日々でした」
矯正医になるための研修は、想像以上に過酷なものでした。
・夜遅くまでの実習
・ほぼ休みなしのスケジュール
・土日は大学以外での仕事
・友人となかなか会えない生活
「非常にハードでしたが、今となってはあの基礎訓練が大切だったと思えます」
厳しい研修期間を経て、矯正医としての土台が築かれていったのです。
H3: 「一人前」はいつ?──35年経った今でも
研修を終え、認定医を取得し、数千症例を経験しても、佐々木先生は謙虚にこう語ります。
「綺麗に治る確率(勝率)は昔よりも大分よくなったと感じますが、なかなかうまくいかない、難しい患者さんも多い。一人前とはまだまだ言えないのが本当のところです」
矯正歯科の奥深さと、生涯学び続ける姿勢の重要性が伝わってきます。
H2: 矯正医になって見えた世界──一般歯科との決定的な違い
H3: 「二刀流」は難しい──専門性の高さ
矯正医になる前となった後で、歯科の世界の見え方はどう変わったのでしょうか。
「矯正治療はいまだに難しく、極めるには一般歯科との二刀流は難しいと感じています」
多くの歯学部生が悩む「専門医か、一般歯科医か」という選択。
佐々木先生の言葉は、矯正歯科の専門性の高さを物語っています。
H3: 症例数の変遷が語るもの
若い時期: 年間150~200症例
現在: 年間100症例程度
累計: 約4,000症例
「症例数は減りましたが、一つ一つの症例により時間をかけ、丁寧に向き合えるようになりました」
量から質へ──経験を重ねることで、治療へのアプローチも変化していきます。
H2: 忘れられない患者さん──矯正治療が人生を変える瞬間
H3: 70代末期がん患者の「最後の願い」
「どうしても生きているうちに歯並びを綺麗にしたい」
70代の末期がんで看護師をされている患者さんからの、この言葉。
「自身の持つ劣等感を打破して人生を終えたいという、審美へのあこがれや覚悟が感じられました」
矯正治療は単に歯を動かすだけではない──患者さんの人生そのものに関わる治療なのだと、佐々木先生は語ります。
H3: 矯正医としての最大の喜び
「患者さんによっては、治療前と治療後で、その後の人生が変わるほど劇的にきれいになります。それをとても喜んでもらえる瞬間──これが矯正医としての最大の喜びです」
迷った瞬間は? →なし
後悔した瞬間は? →なし
よかったと確信した瞬間は? →患者さんが心から喜んでくれる、その瞬間
佐々木先生の確信に満ちた答えが、矯正医という職業の魅力を雄弁に語っています。
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H2: 矯正医の現実──光と影
H3: 喜びと苦しみが共存する職業
「矯正医として喜びもありますが、うまくいかないこともあり苦しいことも多い」
35年のキャリアを持つ佐々木先生でも、こう語ります。
H3: 技術だけでは足りない──人間力の重要性
「患者さんによって要求度もさまざまで、非常に細かい方もいらっしゃいます。歯科医とはつくづく人間相手の職業だと思います」
矯正医に必要なのは:
・高度な専門技術
・コミュニケーション能力
・患者さんへの共感力
・粘り強さ
・謙虚に学び続ける姿勢
技術を磨くことはもちろん、人間力も不可欠なのです。
H2: これからの矯正歯科医に求められること
H3: 少子化時代の矯正歯科──ターゲットの変化
「子どもの数は減少してきているので、成人や高齢の患者さんも矯正の対象として見ていくことになります」
佐々木先生が指摘するのは、矯正歯科を取り巻く環境の大きな変化です。
H3: 包括的な知識と連携力が鍵
「矯正の知識だけでなく、ペリオ(歯周病学)やその他の一般歯科の知識、そして他科との連携がより重要になってくると思います」
これからの矯正医に求められるのは:
・矯正の専門知識(当然)
・歯周病学の理解
・一般歯科の幅広い知識
・他科との連携能力
・成人・高齢者への対応力
専門性を深めながらも、視野を広く持つことが求められる時代になっているのです。
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H2: 歯学部生・研修医へのメッセージ
H3: 佐々木先生から次世代へ
35年間のキャリアから見えてきた、矯正医という職業の本質:
・ 専門性の追求
一生をかけて学び続ける覚悟が必要
・患者さんへの共感
自分自身の経験が大きな原動力になる
・厳しい研修の価値
最初の2年間の基礎訓練が将来の土台となる
・人間力の重要性
技術だけでなく、コミュニケーション能力も必須
・包括的な知識
これからは他科との連携がより重要に
H3: 矯正医を目指すべき人とは
こんな想いを持つ方に、矯正歯科はぴったりかもしれません:
・患者さんの人生そのものに関わりたい
・審美的な改善で心も変えたい
・専門性を極めたい
・生涯学び続けることに喜びを感じる
・人と深く向き合いたい
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H2: まとめ──「患者さんの人生が変わる瞬間」に立ち会える職業
「治療前と治療後で、患者さんの人生が変わるほど劇的にきれいになる。それをとても喜んでもらえる瞬間」
佐々木先生の言葉に、矯正歯科医という職業の本質が凝縮されています。
技術的な難しさ、厳しい研修、終わりのない学び──決して楽な道ではありません。
でも、患者さんの人生を変える瞬間に立ち会える喜びは、何ものにも代えがたいものです。
将来の専門分野選択に迷っている歯学部生の皆さん、佐々木先生のリアルな声が、少しでも皆さんの道標になれば幸いです。




