- 公開:2026/03/08
- 更新:2026/03/08
出産・育児を経ても歯科医師は続けられる 〜20代女性歯科医師が語る、ライフイベントとキャリアのリアル
山田 実樹 歯科医師
結婚・出産後に復職したY先生に、育休中のスキル維持から復職後の体力づくり、育児との時間管理術まで、歯学部学生・研修医に向けてリアルな本音を語っていただきました。
Y先生一般歯科医師/20代女性/歯科医師4年目
神奈川県海老名市にある「ベル歯科医院」
勤務スタッフ約50名規模の歯科医院に週5日フルタイム1児の母
「歯科医師は、国家資格を持つ職業。たとえ出産・育児でブランクがあっても、自分の努力次第でいつでも戻ってこられる仕事です」
そう語ってくれたのは、出産を経て現在フルタイムで復職しているY先生。
今回は、ライフイベントとキャリアをどのように両立してきたか、歯学部学生・研修医の皆さんに向けてリアルな経験を届けていただきました。
キャリアのスタートと、出産という転機
Q.研修医修了後のキャリアについて教えてください。どのような診療を中心に経験を積まれましたか?
A.Y先生
研修医を修了してからも、そのまま現在の医院に勤務を続けています。
診療内容は一般歯科を中心に、小児歯科や予防診療の割合が多く、症例数が豊富な環境で
した。保存・補綴・小児・予防と幅広い分野を実践的に学べたことは、若いうちに経験と
して積み上げることができたという意味で、本当に大きかったと感じています。
Q.結婚・出産のタイミングはどのようにお考えでしたか?キャリアとの兼ね合いで悩まれたことはありましたか?
A.Y先生
正直なところ、「この時期に」と明確に計画していたわけではなく、授かりものだと捉えていました。
妊娠が分かってから、院長や女性の先輩ドクターに相談し、今後の働き方について一緒に話し合いました。
一人で抱え込まずに実際に出産・復職を経験している先輩の意見を聞けたことで、将来の見通しが立てやすくなり、漠然とした不安もずいぶん軽くなりました。
「一人で悩まないことが大切。先輩ドクターに相談できる環境があるだけで、将来のイメージがまったく変わりました」と——Y先生
産休・育休中の過ごし方——スキル維持のリアル
Q.産休・育休の期間と、その間の過ごし方について教えてください。
知識・スキルの維持に向けた工夫はされましたか?
A.Y先生
産休・育休は約半年間取得しました。振り返ると幸せな時間ではありましたが、実際には慢性的な睡眠不足の日々で、まとまった勉強に時間を割く余裕はほとんどありませんでした。
「何か勉強しなければ」という焦りはあったのですが、まずは育児と生活リズムを安定させることを最優先にしていました。
その代わり、育休中でも週1回・4時間ほど出勤する形を取り、なるべく臨床感覚が途切れないようにしました。
家族はもちろん、柔軟に対応してくださった院長をはじめ職場の皆さんには、本当に感謝しています。
育休中のスキル維持——山田先生の場合
・ 育休中も週1回・4時間ほど出勤し、臨床感覚を維持
・ 無理に勉強しようとせず、育児と生活リズムの安定を最優先に
・ 職場・家族との日頃のコミュニケーションで、復帰へのハードルを下げた
・育休中の勤務に理解がある職場環境を選んでいたことが功を奏した
復職のリアル——不安とギャップ、乗り越え方
Q.復職を決めた理由と、復職先を選んだ基準を教えてください。
A.Y先生
まず院長に勤務形態について相談したところ、育児との両立を前提に柔軟に対応していただける環境が整っていました。
また、もともと職場の雰囲気が良く、これまで継続して診てきた患者さんを今後も担当したいという思いが強くあり、同じ医院への復職を選びました。
Q.復職前の不安と、実際に復職してみて感じたギャップはありましたか?
A.Y先生
最も大きかった不安は体力面でした。
出産・育児を経て、以前より体力が落ちていると感じる場面があり、「フルタイムでやっていけるのか」という心配がありました。
一方で、患者対応については思ったよりスムーズでした。育休中も時折出勤していたおかげで、患者さんやスタッフとの関係が途切れておらず、それが復職後の大きな安心感につながりました。
今後は子どもの急な体調不良などでお休みをいただく場面も出てくると思います。
その際にご迷惑をおかけするからこそ、日頃のコミュニケーションと感謝の気持ちを大切にしたいと考えています。
Q.体力面への不安に対して、どのように取り組んでいますか?
A.Y先生
週に1回は意識して運動の時間を設けるようにしています。
無理なく続けられる範囲で体力の維持・回復に取り組んでいます。
また、診療終了後はできるだけ早く帰宅できるよう職場に配慮していただいていることもあり、徐々にペースをつかんでいる最中です。
「ブランク明けで一番大変だったのは体力面。週1回の運動を意識的に取り入れるように
しています」——Y先生
1日のタイムスケジュール——育児×フルタイム勤務の実態
現在の山田先生の1日のスケジュールを公開していただきました。
Q.育児と仕事を両立する上で、最も大変なことと工夫していることを教えてください。
A.Y先生
とにかく時間が限られていることが最大の課題です。その分、限られた時間をいかに有意義に使えるかを常に意識するようになりました。
体調管理も重要で、自分が倒れると仕事にも家庭にも影響が出てしまうため、栄養管理と体力づくりを意識しています。
また、家事は積極的に「現代の文明の利器」に頼っています。お掃除ロボット・自動調理器具・ドラム式洗濯乾燥機など、任せられるものは機械に任せることで、自分の時間と体力を守るようにしています。
家庭では夫と役割を分担しており、朝の準備は私が担当し、夕方の保育園のお迎えは夫が担当しています。
一人で抱え込まないことが、長く続けるための鍵だと感じています。
歯学部学生・研修医へのメッセージ
Q.学生時代・研修医時代にやっておいてよかったこと、やっておけばよかったことを教えてください。
A.Y先生
学生時代は比較的まとまった休みが取れる貴重な時期です。
旅行をしたり、様々な経験をしておくことは、後から振り返ると本当に大切だったと感じます。
社会人になるとまとまった休みを取ることが難しくなるので、学生のうちにもっと多くのことに挑戦しておけばよかったという思いはあります。
研修医時代については、できるだけ多くの臨床経験を積める環境を選ぶことが重要だと感じました。
症例数の多い環境で幅広い経験を積んでおくことが、ライフイベントを迎えた後の自信につながると思います。
Q.将来のライフイベントを見据えて、今から準備しておくべきことはありますか?
A.Y先生
日頃から相談できる人をつくっておくことが大切だと感じています。
先輩や上司に気軽に話せる関係性があるだけで、ライフイベントに直面したときの不安はかなり軽くなります。
私自身、先輩ドクターに相談できたことで、将来のイメージを持てるようになりました。
また、しっかり成長できる職場環境を選ぶことも重要です。
経験値が高ければ、ライフイベント後も自信を持って復職できると思います。
まとめ
歯科医師は国家資格を持つ職業です。妊娠・出産を経験しても、仕事を続けることができます。
育児がキャリアの足かせになることはなく、何歳になっても、たとえブランクがあっても、自分の努力次第で再び挑戦できる仕事です。
自分の体力や生活状況と向き合いながら、ライフワークバランスを考えていけたら良いのではないでしょうか。
私自身もまだ子育て初心者ですが、限られた時間の中で、今自分にできることを精一杯続けていきたいと思っています。
——Y先生(歯科医師4年目・1児の母)
編集後記
取材を通じて印象的だったのは、Y先生が常に「一人で抱え込まない」ことを大切にされているという点でした。
相談できる先輩をつくること、職場と日頃からコミュニケーションをとること、家庭での役割分担——どれも当たり前のようで、実践し続けることが難しいことです。
歯学部学生・研修医の皆さんが将来のライフデザインを考えるうえで、ひとつの道標になれば幸いです。
取材協力 神奈川県海老名市「ベル歯科医院」Y先生
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