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現役日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医の1日|外来・手術・出張診療まで密着取材
入江 彰彦 歯科医師/開業医/歯学博士
神奈川・長崎を中心に全国10院ほどの歯科医院と提携し、外来診療から出張オペまで幅広く活動する現役口腔外科医・入江彰彦 先生。 開業医として自院を経営しながら、各地の歯科医院をサポートする“二刀流”の働き方をされています。
本記事では、そんな入江先生の出張先での2日間に密着。 外来の様子、インプラント埋入手術、研修医への指導、およびキャリア相談に至るまでを“時系列”で追いかけます。
また、記事後半では研修医からのインタビューも掲載し、口腔外科医としてのキャリアの築き方・働き方を深堀りしました。
① 朝の始業〜外来診療:大型歯科医院での一日が始まる
19:00|博多を出発(前日・日曜) 入江先生の出張は、福岡の自宅からスタート。 家族との時間を大切にされており、出発前には必ず家族と食事をして“休日を満喫してから”移動するのがルールだそう。
20:35|羽田空港に到着 約2時間弱のフライトで東京に到着。翌日の長時間診療に備え、早めの移動で体調管理を徹底します。
22:30|前泊ホテルへチェックイン 提携先「ベル歯科医院」にアクセスしやすいホテルに宿泊。 長距離移動を終えたら、翌日の手術に向けてしっかり休息。 口腔外科医は手技の繊細さが要求されるため、“睡眠の質”も仕事のうちだと語られます。
② オペ準備とチーム体制:インプラント埋入手術の現場
9:30|朝礼参加 常勤スタッフ約40名という大規模歯科医院の朝礼は圧巻です。 チーム医療の要である“情報共有”の徹底が、良質な医療の土台になります。
10:00|インプラント手術がスタート 手術用ガウンに着替え、緊張感のある空気の中でインプラント埋入術へ。 入江先生は手術中も、若手歯科医師・研修医に適宜ポイントを解説するスタイルで、教育による“底上げ”も意識しています。
・骨の状態確認
・ガイドの適合評価
・プランニング通りかのチェック
・手術中の判断のコツ
など、普段は聞けない“生の判断”が見られる貴重な機会。 研修医にとっては、まさにリアルな口腔外科の現場学習です。
19:00|診療終了 長時間の外来と手術を終え、私服に着替えて一息。ここからは…
19:30|勤務医・研修医との食事会(通称:いりえ飲み) 「普段聞きにくいことを相談する場」として人気の時間。 キャリア相談、症例の悩み、人間関係、開業など、話題は多岐にわたります。 口腔外科医としての技術だけでなく、人としての姿勢を学べる機会でもあります。
③ 出張診療2日目:カンファレンスでの症例検討とチーム医療
9:30|朝礼〜外来診療 2日目も朝から予約がいっぱい。月曜は入江先生のオペ希望が集中しやすく、提携医院でも“即埋まる枠”として知られています。
12:00|週次カンファレンス(症例検討会) ベル歯科医院では火曜に全体ミーティングを実施。 加えて、入江先生がいる月曜は症例検討の特別カンファレンスを行います。
・インプラントの治療計画
・全身疾患を持つ患者のリスク評価
・義歯・補綴との連携
・難症例の診断方針
・CT画像の読み方
など、内容は高度で、研修医にとって非常に学びの深い時間になりました。
17:00|2日間の出張診療が終了 手術・外来・教育のすべてを終え、福岡へ帰路につきます。
21:40|福岡(博多)到着 家族のもとへ帰り、翌日は自院での診療へ。 出張と自院運営の両立する働き方は、時間管理と健康管理の徹底によって成り立っています。
④ 終業後の学習・研究:専門医としての継続的アップデート
入江先生は、移動時間を「インプットの時間」にすることで知られています。
・論文チェック
・インプラント関連の新デバイスの情報収集
・症例の振り返り
・セミナー講師としての資料作成
特に移動が多い出張医の場合、“隙間時間をどう使うか”が成長の差になると語ります。
歯科研修医からのQ&A
Q1:複数の歯科医院から信頼される理由は?
A:入江先生が各地の歯科医院から継続して依頼を受ける背景には、技術力だけでなく“人としての信頼”があります。 紹介から始まったご縁を誠実に守り、一つ一つの手術を丁寧に行い続けてきた結果、「困ったときに頼れる口腔外科医」としての信頼が積み重なっていったそうです。 先生は「紹介と信頼がキャリアを広げる」と繰り返し強調しており、人とのつながりを大切にする姿勢が現場での信頼につながっています。
Q2:自院経営と出張オペを両立するうえで大変なことは?
A:最も大きいのは 健康管理と時間管理、そして 家族との時間の確保。 出張続きだった時期はいわゆる“渡り鳥生活”で、生活のリズムが不安定になりがちだったといいます。 現在は「家族を中心に考える」働き方へシフトし、出発前に必ず家族との時間を取ることや、移動スケジュールを最適化することでバランスを取っています。
Q3:出張先は大型医院ばかりですか?
A:意外にも、実際は チェア3〜4台ほどの小規模歯科医院からの依頼が多いそうです。 インプラントや抜歯などの外科ニーズは医院規模に関係なく存在し、 「複雑な症例だけ専門医に依頼したい」という中小規模医院の声が増えています。
Q4:ベル歯科医院はどんな医院に見えましたか?
A:40名規模の大規模医院であり、教育体制や規律の高さが印象的だったと話します。 スタッフが共通の基準で動いているため、口腔外科医としても仕事がしやすく、 「若手が一度こういう環境で基準を知ることは大きな強みになる」と強調していました。
Q5:歯科医師と歯科医師専門医の違いは何ですか?
A:「資格そのものより、自分が何をしたいのかが先」と話します。 専門医資格は目的を達成するための“手段”であり、 患者さんのために診断力・リスク管理・手術の質を高めたい人には専門医の道が合っています。
Q6:開業を決意したタイミングは?
A:35歳の頃、大学病院でのキャリアを続けるのか、開業の道に進むのか真剣に考えた時期があったそうです。 開業後に苦労した点としては、 「理想と現実のギャップ」 や マネジメントの難しさ を挙げています。 しかし、その経験が今の働き方につながっているとも語ります。
Q7:研修中にやっておくべきことは?
A:技術習得よりも、まずは 人との連携力 を鍛えることが重要だと強調しています。 外科治療はチーム医療であり、周囲と協力して動ける人の方が成長が早い。 「技術はあとからでも追いつける」が入江先生の持論です。
⑤ 口腔外科医の勤務形態・働き方のリアル
■ 口腔外科医の主な働き方
・大学医局(外来・病棟・救急・研究)
・一般歯科医院の口腔外科担当
・インプラントを中心とした自由診療歯科医院
・出張オペ専門医(非常勤)
・開業 × 出張併用(入江先生型)
■ 出張オペの需要が増えている理由
・インプラント希望の増加
・高齢患者の全身管理の必要性
・CT・ガイドの普及による症例拡大
・“困った時の専門医”としてのニーズ
■ 1日の症例数(ベル歯科、いりえ口腔外科クリニックの場合で表を作って掲載したい)
・外来:20〜35名
・インプラント埋入:1〜3件
・抜歯(水平埋伏など):2〜5件 ※提携医院や地域によって変動。
■ 当直の有無
・一般歯科医院の口腔外科担当は基本当直なし。
・大学病院勤務の場合は救急の関係で当直あり。
■ 学生・研修医の見学は可能?
→ 医院の規定によるが、ベル歯科医院のような教育体制がある医院は見学可の場合が多い。
口腔外科認定医になるには?|最初に踏むべきキャリアステップ
口腔外科認定医は、口腔外科専門医を目指す上での“最初の資格”です。 単なる経験年数ではなく、「口腔外科を体系的に学んだ医師」であることを証明します。
口腔外科認定医の取得条件(初期ステップ)
認定医になるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・歯科医師免許取得後、1年間の初期臨床研修
・その後 2年以上の口腔外科研修
・臨床経験・学術活動(症例報告、学会発表など)
・申請書類審査+筆記試験の合格
認定医は「口腔外科の基礎を正式に修めた証」であり、ここを起点に専門医・指導医へのキャリアが開かれます。
口腔外科研修施設の選び方|失敗しないためのチェックポイント
全国には200以上の口腔外科研修施設がありますが、選び方次第で“経験できる症例・教育環境”が大きく変わります。 ミスマッチを避けるために、以下の観点を確認しましょう。
研修施設選びで見るべき4つのポイント
・臨床重視か研究重視か
・指導体制(指導医の在籍状況)
・施設が力を入れている分野(がん、外傷、顎関節症など)
・症例数と研修医の役割
口腔外科専門医になるには?|高難度症例を扱う“プロフェッショナル”への道
口腔外科専門医は、診療技能だけでなく教育・研究まで担う上位資格です。
口腔外科専門医の取得条件
専門医を取得するには、以下が求められます。
・初期研修修了後、6年以上の専門研修
・学会認定 of 研修施設に所属
・症例報告100例以上(うち40例は難易度レベルII以上)
・書類審査 ・筆記試験・口頭試験・手術実地審査
専門医は「臨床能力」「教育力」「学術活動」を兼ね備えた専門家として位置づけられます。
口腔外科指導医になるには?|教育・診療・研究を統合する最上位資格
指導医は、若手口腔外科医の育成を担う“教育者”としての役割が求められる最上位資格です。
指導医の取得条件(最終ステージ)
・初期研修修了後、12年以上の経験
・専門医取得後3年以上の研修
・指導医のもとでの診療経験
・学術活動(論文、学会発表)
指導医は、教育・診療・研究の三位一体で活躍し、口腔外科の専門性を社会に広げる存在です。
まとめ|口腔外科医の働き方は“人・技術・継続学習”で広がる
本記事では、現役口腔外科医の1日に密着し、外来、手術、出張、教育まで含めた多忙で充実した働き方をご紹介しました。
入江歯科医師の働き方から見えてくるのは、 「人とのつながり」 「技術の磨き続け」 「家族と健康を大切にする姿勢」 の3つがキャリアを支えるということ。
口腔外科医を目指す方、キャリアに悩む研修医の方にとって、 本記事が進路を考えるきっかけとなれば幸いです。




